雲南省 元陽と羅平の旅3
3日目。
Aさんの様子がちょっとおかしい。
胃が痛いという。
あぁ、確実に風邪だ。
1日目にあの寒さの中で、半そで寝ていたから、体が冷えたのだ。
とりあえず、胃腸薬を飲ませる。
本日は開遠から、羅平へ向かう。
途中、時間があれば少数民族の村にもよるという。
トンネルを抜けるとそこは…
2時間くらい走った頃だっただろうか。
トンネルを抜けたとたん、風景が一変した。
道路脇の草木が白い。
Aさんが霜じゃない!?というが、時間を見るともうお昼ちかい。
違う。
雪!?
いや、樹氷だ!!!
まさか!
…そのまさかだった。
草も樹も、村も、畑に植わっていた菜の花までも、
全てが凍り付いていた。
一体、何が起きているのか、しばらく目の前の景色が、信じられなかった。
(実際は、樹氷ではなく、霧氷でした)
写真を撮りたいと、車を停めてもらう。
気がつかなかったが、道路も凍結していた…。
「白く凍る樹木」
今年の冬は、中国の南方が大寒波に襲われ、大きな被害を出していると聞いてはいたが、まさか、雲南までこんなことになっているとは夢にも思わなかった。
菜の花が咲いているところを見ると、少し前までは暖かかったに違いない。
生まれて始めてみる光景に、背筋が寒くなる。
ここで暮らしている人たちは、どうしているのだろう…。
暖房設備もまともにないのだろうに…。
よくみると、電線も凍り付いてた。
電気ももしかしたら通ってないかもしれない。
決断の時…
異様な光景が続き、時々タイヤが空回りしてる。
緊張する。
しばらく走ると、道路封鎖のためにそれ以上前に進めなくなった。
これから軍隊が道路の解凍のためにやってくるという。
その作業次第だが、どれくらい待つか分からないと言われる。
引き返すべきか、待つべきか、ガイドさんを含めみんなで相談する。
孫さんは言う。
「時間はかかると思うが、おそらく羅平に行くことは出来るでしょう。
でも、同じ道を引き返してくるので、明日昆明に帰れるか保証ができません。」
ドライバーの訒さんがつぶやいた。
「これ以上、運転する自信がない。引き返したほうがいいよ。」
この一言を聞いたとき、私も引き返したほうが良いと思った。
視界5mの濃霧の山道走行でもびくともしていなかった凄腕ドライバーの訒さんが、自信がないというのに、何も無理して羅平に行くことはない。
菜の花ならば、途中でたくさん見れたし。
何よりもスパイクもチェーンも履いてないタイヤのままでこの先走り続けるのは、危険を伴う。
羅平で足止めを食らうより、昆明に戻ったほうがいい。
誰も反対しなかった。
あの光景を目の当たりにしていたら、誰もここで無理してGO!ということは出来ないだろうと思う。
とりあえず、近くの村に行き、なんとか空いてるレストランを探し出し、昼食をとる。
その間に、ガイドの孫さんが、テキパキと手配変更をしてくれる。
昆明のホテルも無事に取れ、急遽、世界遺産である石林に寄ってもらうことにする。
臨機応変に対応できるベテランガイドで良かったと心から感謝する。
Aさんは、一口も昼食を取らないほど、胃腸の調子が悪化。
寒さに凍え、練炭のストーブで暖を取った。
レストランのトイレは、水道が凍結してるから、使えないと言われる。
恐ろしいことになってそうなので、ガマンをする。
昼食後、バスは石林を目指して走った。
途中、警察が検問をしていた。
何事かと思ったら、この先道路凍結しているので、
急ブレーキ、急ハンドルはさけ、徐行運転するようにという注意喚起だった。
2度目の石林
なんどかタイヤが空回りをして、ヒヤッとする。
途中、立ち寄ったガソリンスタンドのトイレは、
この世のものとは思えないおぞましい状態になっていた…。
当然、流す水も、手を洗う水道も凍りついていて、出ない…。
全てが凍り付いていたせいか、匂いがなかったのがせめてもの救い。
なんとか用を済ませ、逃げ出すようにトイレから出てきたら、
ドライバーの訒さんと、ガイドの孫さんがなにやら興奮している。
どうしたんですか?!
と聞いたら、なんと後から入ってきたミニバンが、
スタンド内でスリップして、ガソリンを供給する台にぶつかったようだ。
下手したら大惨事だったよ。と、大興奮。
私たちは、トイレの外でそんなことが起きていることすら、気がつかないほど、
おぞましい光景を前に必死だったけど(笑)
そんなプチ事件を経て、なんどか無事に凍結している地帯を抜けた時は、心底ほっとした。
石林に到着した時は、すでに午後4時近く。
この3日間、寒さに凍えていた私は、到着早々、お土産物屋で、ウールのショールを購入した。
首に何か巻くと、それだけでだいぶ寒さが変わる。
これでようやく落ち着いて観光ができる。
よく考えたら、何の因果か2年前にここにきた時も、到着早々お土産物屋で日除けのための帽子をかったのだった。
1時間ほど、石林の中を散策する。
まさか2度も訪れるとは思わなかったなぁ。石林。
初めて見たときは、すごいなぁと思ったけど、
さすがに2度目は感激も半減でしたが(笑)