ラサの旅

liyuan2005-05-04


期間:2005年5月4日〜7日 3泊4日
旅人:3人

出発前に

5月は中国も労働節の大型連休がある。
日本から世界遺産巡りの相棒が北京に遊びに来てくれることになった。1週間も北京にいたら飽きてしまうので、ハルピン・桂林と一緒に旅行をしたYさんと3人で、ラサに行こうということになった。


ラサは、ブラット・ピット主演の映画『セブンイヤーズ・イン・チベットセブン・イヤーズ・イン・チベット [DVD]や旅番組などで見るたびに、行ってみたいと思っていた場所であり、世界遺産巡りをライフワークにしている私にとっては、行きたくてもなかなかいけない場所の一つでもあった。
何しろ、日本から行くには時間もお金もかかりすぎる。そのうえ、標高も高い。そう思っていたので、3泊4日の予定でラサに行くのは、かなりハードスケジュールだと言われていたが、このチャンスを逃したくはなかった。


ラサは世界の屋根と称されるチベット高原の中心部に位置しており、標高は3650mもある。
友人やインターネットやガイドブックなどで情報収集をしていたら、「高山病」という言葉がやたらと出てくる。
そりゃそうだ。飛行機をおりたらいきなり富士山の山頂付近にいるようなものなのだ。辺鄙な場所で、具合が悪くなって帰って来れなかったら大変だ。
普通は1週間くらいかけて身体を慣らしながら旅をするのだそうだ。
それを、3泊4日で行くとなると、身体が慣れた頃に帰るようなものらしい。かなりハードだと思うよと皆から口々に言われた。
だんだん心配になってきて、Yさんと事前に病院で高山病予防薬を処方してもらった。
出発の前日から飲み始めて、利尿作用と、酸素を多く取り入れるために心拍数を少しあげるための薬らしい。


ラサに入るためには、入境許可証が必要だ。
代行旅行社に頼み申請する。ちょっと秘境に行く感じがしてきた。

いよいよ出発

高山病予防薬も前日からちゃんと飲んだし、入境許可証もちゃんと持ったし、準備万端だ。
朝5時半、出迎えの車がなかなか来ない。
どうやら運転手が寝坊したらしい…。しかもアパートの前まで来るように前日指示したのに、敷地内でも迷ったらしい。焦ったけれど、飛行機には余裕で間に合った。
成都で乗継をして、チベット自治区の区都「ラサ」へ。
飛行機の窓から見える山々が見下ろすのではなく、同じ目線で見える。それだけ高地に近づいているということだろう。
山と川以外、何も見えない。すごいところに来てしまったもんだ。


ラサ空港で、歓迎の意を表すハタという白い布をかけてもらった。
一歩外に出ると、日差しがとても強いが空気がとても澄んでいてキレイだ。


ラサ空港から、市内まで100kmほどあり、車で1時間半ちょっとかかる。
その間に、ガイドさんがラサについての説明をしてくれる。


チベット仏教の聖地であるラサは、チベット語で「神の地」を意味する。
1300年あまりの歴史があり、チベットの政治・経済・宗教の中心地であるそうだ。
チベット族の人たちは、非常に信仰心が強い。そのため、いまだに葬儀の仕方も独特だ。土葬は地獄に落ちるという観念から、一般的でない。水葬、鳥葬などが一般的に行われているらしい。


そういえば、昔テレビで鳥葬についての番組をみたことがある。
今は、一切非公開だそうだ。
って、神聖な儀式を部外者が興味半分で見にいくこと自体間違っていると思うけど。
ガイドさんは、成都の出身で夏の間だけラサでガイドをしているらしいが、一度だけ水葬を目撃したことがあるといっていた。
チベットの人たちは、川魚…とくにラサ川の魚は食べないのだそうだ。なぜ?と聞くと、ラサ川では水葬を行っているからとのこと。
うーん、なっとく。


車はひたすら川に沿って走るのだけれど、川の水は信じられないほど透明で、とても美しい。
川岸や、白壁の民家の屋根に、赤・青・黄・白・緑のタルチョ(祈祷旗)がはためいている。
タルチョは風に吹かれるたびに、1回経文を唱えたことになるという。それぞれの色にも意味がある。
赤=火、青=空、白=雲、黄=大地(土?)、緑=水 というように。

HTLに到着

身体を高地に慣らすために、1日目の予定は、移動のみというスケジュールだ。
ガイドさんからも高山病にならないためには、無理をしない、走らない、酒・タバコは控える、初日はシャワーを浴びないなどの注意事項を受けた。
風邪をひいて、熱を出すと危険なのだそうだ。
そんなにキツイのだろうか、とちょっと心配になってくる。
昼過ぎに到着して、ホテル前のレストランで昼食を取る。お店の雰囲気は、チベット風だけれど、料理は普通の中華だった。


今回は、ホテル代をケチって3星ホテルにした。
この選択が今回の旅の最大の落とし穴だったということに、この時の私たちはまだ気がついていない。
とりあえず、チェックインをして夕食までの時間は、それぞれ部屋にてのんびり過ごすことにした。
今のところまだ誰も高山病は発症していないので、元気満々だったが、ここではしゃいで後で痛い目にあうのはいやなので、ガイドブックを見ながらのんびりと昼寝をすることにした。

寒さ対策

それにしても部屋が異常に寒い。
空調の温度を調節したが、部屋がなかなか暖まらない。お湯を飲んで身体を温めていたが、それにしても寒い。
夕食時にガイドさんに部屋が寒いことを伝えると、暖房を入れてもらいましょうと言ってくれたが、5月なのでもう暖房はないとのこと。部屋に毛布を入れてもらうことになった。


3日目に行く予定のナムツォ湖は標高4000mあり、まだ雪が降るとのこと。
高地なので多少寒いことは想定していたけれど、まさかそこまで寒いとは考えておらず、
ウィンドブレーカーにトレーナーくらいしか持ってきていない。ましてやセーターやジャンパーなどの防寒具が必要だなんて誰も考えもしなかった。
ガイドが、僕のセーターでよければ貸しますが…と言ってくれたが、さすがにそれはちょっと…(笑)。
というわけで、夕食後に防寒具が買えるお店に案内してもらうことにした。
ホテルのレストランから、ロビーに戻るまでの20段くらいの階段を登る際に、息が切れる。これが高山病なのだろうか?それともただの体力不足?
高山病は、到着してから半日後くらいに出てくるらしいので、ちょっと怖い。


タクシーにのって市内中心部へ。途中、ポタラ宮の前を通る。


…あら。


こんな中心部にそびえ立っていたのね…。
しかも道路のすぐ横だし。ちょっと拍子抜け。
『セブンイヤーズ・イン・チベット』に映っていたポタラ宮はもっと広大なイメージだったのだけれどなぁ。


ラサ市内は、漢民族が暮らす地区と、チベット族が暮らす地区(旧市街)がはっきりと分かれている。建物の形からすでに違うので、一目瞭然だ。漢民族が暮らす地区は、新市街と呼ばれ、カジュアルブランドのチェーン店がたくさん軒を連ねていて、一瞬ラサにいることを忘れてしまうほど都会だ。
とりあえず、北京でもよく見かけるチェーン店に飛び込み、フリースの裏地がついたジャンパーと、裏起毛のトレーナーを購入する。これで寒さもなんとかしのげるだろう。
私は、寝巻きも半そで短パンしか持ってきていなかったので、寝巻き用にトレーナーをもう一着購入した。部屋が異常に寒いので、あの格好で寝たら凍死してしまう…。


伝説のイヤゲモノ

そのあと近くにあるスーパーに行き、物価チェック。北京より少し安い。
ここで、お土産にラサの特産?だという裸麦のオートミールとインスタントのバター茶を購入した。


ちなみに…、このバター茶を、後日、お土産に会社の人たちに配ったけれど、あまりのまずさに大不評。
伝説の「いやげもの」(もらっても嬉しくない「いやーなお土産」のことらしい)となってしまった…。うちの社長なんて、皆の反応があまりにもひどいので、封も開けずにそっと捨てたらしい…。
しばらくしてから、申し訳なさそうに自己申告してくれました…。
ひどーっ!!(笑)
ちなみにYさんは同じものを配ったらしいけど、美味い!と言った人が2人もいたらしい。
うーん、人の味覚って本当に千差万別です…。

寒さと戦った夜

部屋に戻ると、さきほどよりさらに寒くなっていた。空調は、本格的に壊れているらしい。
外の方が暖かいと感じるほどだ。おかしい。
こんな寒さの中で、シャワーを浴びたら、一発で風邪をひいてしまいそうだ。
ガタガタ震えながら、とりあえず買ったトレーナーを着てお湯を飲んで布団にもぐりこんだ。
高山病の症状は、頭痛、息苦しさ、めまい、吐き気、睡眠障害などがあるらしい。
この日、私は夜中に何度も目が覚めてしまい、あまりよく眠れなかった。