周口店・雲居寺

北京原人



10年ほど前から、友人と「世界遺産巡り」をテーマに日本国内旅行をしていた。
そして、北京に来てからは、中国の31箇所ある世界遺産を全部周ってみようと意気込んでいる。
昔行ったのも数えると、後残りは14箇所。まだ半分近く残っている。
その残りのうちの一つに、「周口店」がある。


「周口店」は、北京郊外にある。
でも。
行った人からの評判は、「がっかりした。」「つまらない。」「わざわざ行くほどのところじゃないよ」とすこぶる悪い _| ̄|○


そうは言っても、このままでは、いつまで経っても行った事のない世界遺産が1つ減らない。しかも北京に住んでるのに、北京で行った事のない世界遺産があるなんて、とってもいやな感じだ。


というわけで、同じ事を考えていた社長と車をチャーターして思い切って行くことにした。
社内で、参加者を募ったら、なんと総勢10名の団体になった。
みんな考えてること一緒じゃーん(笑)


通常、周口店に行く場合は、近くにある「盧溝橋」の見学とセットにされることが多いのですが、社長も私も「盧溝橋」は行った事があったので、企画者の独断により今回は「盧溝橋」はカット。
その代わり、周口店から38kmほど離れた「雲居寺」というところに行き、そこで精進料理を食べることにしました。


まず「雲居寺」へ。
北京市内から75kmほど離れた房山のふもとに建てられている仏教史上大変貴重な遺跡なのだそうだ。

「雲居寺」

「雲居寺 北塔」    


車内で、ガイドさんが中国仏教と道教の思想違いや、歴史について1時間半近くかなり熱っぽく語っていた。後半は、どこかの新興宗教の勧誘ですか!?(笑)って感じになってきて、ちょっと面白かったです。


雲居寺は、次期世界遺産に申請予定の寺らしい。
仏教が弾圧された時に、仏教徒が石に仏典を刻み*1、それを山の上の洞窟に保存した。そこが一杯になり、寺の境内にも埋められ、それが1957年に発見されたとガイドブックには書いてあった。
発見された石経は、境内の地下にある部屋に大切に保管されていた。それもかなり大量に。あの石一つ一つに、仏典を刻んであるというのだから、驚きだ。
私たちはガラス越しにしかそれらを観ることが出来なかったけど。

「石経」


山の洞窟にもロープウェイで見学にいけるのだそうだが、ロープウェイが点検中で今回は諦めた。40分近くも山を登るらしいと行ったら、みんな及び腰になっていたし…。



お寺自体は空襲で破壊されたが、1996年にかつての規模に再建されたようだ。
建物も仏像も全てがキレイになっていたが、あまりにもぴかぴかすぎて、ちょっと興ざめした。
昔ながらのたたずまいを残したほうが、味があって好きなのだけど、どうもこちらの人は修復する際は新品同様にしない時がすまないようだ。
故宮も今、修復中だけど、あの黄色い瓦屋根があまりにも明るくなりすぎて、威厳というか風格というか、味がなくなってしまった感が否めない。
まぁ、絵画の修復でもそうらしいけど、修復作業ってのは国や修復する時代によって、価値観が変わるらしい。すべてに手を入れて完璧にもとの姿に戻すのが、素晴らしいとされるのと、元のタッチを残しつつ、傷んだ部分だけを修復するのが良いとされるのでは、仕上りも当然違ってくる。だからどっちがいいとは一概には言えないのだけれど。
私は個人的には、あまり手を入れすぎないほうが好みです。

「キレイに色を塗られた像」


お昼は、雲居寺の境内にあるレストランにて、精進料理をいただく。
精進料理って、一切肉や魚貝類を使わないお料理なのだけど、言われないと分からないものが多い。野菜やこんにゃく、きのこ類を使って、ほとんど肉の食感を再現できてる。
ここの精進料理は、結構本格的で、思ってたより美味しく、皆も食べてくれていたのでホッと一安心です。


雲居寺のあとは、いよいよ本日のメイン「周口店(世界遺産)」へ。
1929年に北京原人が発見された場所として、世界遺産にも登録されている。


まず、博物館へ。
50万年前に、北京原人が家族生活を営み、火を使っていたことが、発掘されたものなどからわかると展示されている。
原人が食べたとされる、様々な動物の骨も展示されていた。
しかし、すこぶるつまらない…。
日本語が話せるという博物館の係員の説明もいたって簡単だ。「これは、○○の骨です。本物です。」って、あれなら、私だって説明できるぜ(爆)


北京原人の頭蓋骨は、残念ながら日中戦争時に、行方不明となってしまい、未だ発見されていないのだそうだ。
博物館のあとは、北京原人が生活していたといわれる洞窟を見学する。

「猿人洞」


「猿人洞のとなりの洞窟」



ガイドさんの説明を聞いていて、私の友人のお父様である伴野朗氏が書いた「50万年の死角」*2という作品を、ふと思い出した。
子供の頃は、難しくて途中で挫折したのだが、なんだかもう一度ちゃんと読んでみたくなった。帰ったら父の本棚を探してみよう。

五十万年の死角 (講談社文庫 と 4-1)

五十万年の死角 (講談社文庫 と 4-1)



周口店の入口の前に、巨大な北京原人銅像がある。


その向かい側は、線路が走っており、おばあちゃんたちが井戸端会議をしていて、
のんびりとした雰囲気。



私たちは、巨大な原人の銅像との記念撮影で、なぜか多いに盛り上がり、帰ろうとした時に、踏み切りが降り、汽笛の音が。
列車に詳しい人はいなかったが、なんとなくみんなで、カメラを構えて機関車を激写。
鉄道マニアの同僚へのお土産です(笑)



「東風4の2号機」
月曜日に、この写真を鉄道好きの同僚に列車の写真撮って来たよと言って見せたら、なんと大興奮!!
偶然とはいえ、マニアにとっては激レアモノの機関車なのだそうです。
というのも、このボロボロの機関車(東風4の2号機)、なんとこの形式では中国で一番古い現役の機関車らしい。
ちなみに、同型の1号機は北京の鉄道博物館入りを果たしているとのこと。
正面の上に、ラッパのような形をしたものが5個乗ってますが、それもレアなのだそうだ。マニアは見るところが違いますね…。
ただの機関車だと思ってとった写真が思わぬお宝写真になったようだ。


すこぶる評判の悪かった周口店ですが、私たちはなんだか楽しめてしまいました。
大人数で行ったのが良かったのかもしれません。


お昼が精進料理だったので、夜は皆で焼肉とビールをいただきましたー。



>ZhongZhongさん
頂いたミッションですが、残念ながら 回りには露店は1軒もありませんでした…。



付録
中国の観光地では、なかなかユニークな形をしたゴミ箱が多い。
昔はパンダの形をした陶器製のゴミ箱を良く見かけたが、最近はめっきり減ってきた。
今回は、塔の形をしたものと、サボテン型を発見。
それと、とても驚いたのが、分別式のゴミ箱があったことだ。
日本ではゴミの分別は、もはや当たり前になってきているが、この国ではまだまだだ。
ペットボトルも生ゴミも電池も同じゴミ箱に捨てている。
オリンピックに向けて、エコロジーに力を入れているところを、アピールする狙いもあるのだろう。
いいことだ。


■ユニーク型ゴミ箱
「雲居寺:塔形ゴミ箱」
「周口店:サボテン型ゴミ箱」


■分別式ゴミ箱
「雲居寺:分別式」
「周口店:分別式」
           

*1:石経と呼ばれる

*2:第22回江戸川乱歩賞受賞作品